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はろー、因果(白黒無常 東風遥の話)
「貴方は、妻を娶ろうとしないのですね。引く手数多でしょうに」
柔らかい声が天幕に響く。灯りに照らされて煌めく金の瞳を見つめ返すことも出来ず顔をそらす。
「西方の血は見世物としては秀逸だが共に暮らすとなると気味が悪かろう、それに……」
「『俺は戦場と添い遂げるつもりだ』ですか?そんなのただの意地じゃないですか」
「意地で結構。お前達が平穏無事ならそれで良い」
少し嫌な言い方になってしまったが望むものが手に入ることなど無いのだから、これ位は赦してもらおう。
「全く………でもね□□、私は君の事も家族だと思っているのですからね?ちゃんと幸せな家を築き上げてくれないと困りますよ?」
何も知らない彼の言葉に、何れとしか答えることはできなかった。
□□□将軍は乱心された。
詮議も無しに斬り捨てたそうだ。
………伐るべきは彼ではないか。
しかし敵うわけも——
きいきいと、知らないと思って好き勝手言う奴らの多い事。
俺は決してお前たちの為に戦場に立ち続けたわけではない、たったひとり愛した男が求めた物を作り上げようとしただけの事。
後はもう、どうでもいい。こいつらがどうなろうとも知った事ではない。
やるべき事はやった。彼の妻子も愚かなことをせねば安泰でいられるだろう。
後はこの、酷い匂いの酒を飲み干すばかり。
ただ一つ、もしも次の世も人で生まれる事が出来るなら。
「もう二度と、あいつの死を見届ける事のない生を送る事をどうか……願うことは許してくれ」
何に成り果てても側になど、言える筈も無いのだから。
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