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ある一コマ(絶望希望のローライフ ネタバレあり)
しくじった、久遠葛は心のうちで呟いた。
命令で行った宗教団体では案の定というかなんというか、神話生物を番犬代わりにしようとしていたらしく、ムーンビーストの相手を自分がし、その間に別動隊に本陣を押さえさせようという段取りのはずだった。
その大半はうまく行ったと言ってもよく。アーティファクト含めて押収、確保は済んだと連絡はあった。一方自分はというと、排除自体は達成したものの腹に鉄筋が突き刺さり下手に動けずにいた。
かろうじて幸わといえるのは、即死するようなものではないということで。クソ上司曰く回収班が来るまで待機せざるを得ないことだろう。
「うぅん………自分で開けば、いや死にますねぇ。ふふふ」
思った以上に冷静なのは、自分が化け物交じりであるせいか、それとも慣れさせる記憶のせいかなんて意味の無いことを考えてしまう。代わりがあるだなんて、懲罰隊として生きると決めた時からわかっていただろうにというところまで思考をめぐらせかけてやめる。それ以上考えると、生きることを手放してしまいそうになりそうだった。
それは、それだけはまだしてはいけない。まだやることがあるから。
「殺すまで生きると、言ってしまいましたからねぇ」
相棒であった彼女にそう約束してしまったのだから、前線から帰って見せる姿は
「ふてぶてしいくらいでなくては、なりませんよねぇ」
そうして意識を失っていく最中、どたどたと足音を聞いた気がした。
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